2.04.2012

カラスの対話6





「お〜久しぶり〜。元気だったカ?」



「元気だったカ、じゃないよ。何の連絡もよこさずに。ぜんぜん更新できなかったし。」



「悪い悪い。あれ以降なんカ、ばさばさしてて。」



「ばたばたじゃない?」



「あ〜、そうとも言います。」



「はい。それはそうと、こっちもいろいろと大変で‥」



「あ〜、あっちに家族いるカらな。」



「うちの巣は大丈夫だったんだけど、まわりはけっこうひどい。」



「親父さんの隠れ家もヤバかったんでしょ?」



「そうそう。もう今までの努力が…」



「大変だ…」



「そんなことが周りであったりして最近おもうんだけどさ、なんカ俺達カラスの習性的に、光るもんとかキラキラしてるやつ集めちゃったりするじゃない。」



「うんうん、ガラスとか釘とか。金属っていいよね〜。大鉱物!」



「そう。でもそれって、あんなことがあったら一瞬で無くなる、パーになる。」



「でも、それはそれなんじゃないカ?」



「まぁまぁ。で、人間とか見てると、流行りの服だとか、新しい家電買うとか、やれPCだスマホだ、」



「PCって何の略?」



「パーフェクト・コミュニティじゃなかった?とにかく、うちらカラスとおんなじで、キラキラしたものいまだに集めてるよね。」



「いいんじゃないカ?」



「いいんだけど、あんだけの災害がまたあったら全部なくなっちゃうんだな、と思うと何かむなしくなってさ。」



「わかるけど、PCとかスマホとかっていうのは、一概に言えないと思う。」



「なんで?電気使えなくなっちゃうし、意味ないよ。」



「いやいや、それは置いといて、そういうツールを使ってる人間達のコミュニケーションのかたち、感覚とかカラダの認識が、ここに来てかなり変わってきてるんじゃないカと思って。あいつら、あんまし気づいてないと思うガ。」



「具体的にお願いします。」



「例えば、フェイスブックとかツィッターとか、たくさんの人間とつながってる感覚ってあるじゃない。」



「ふんふん。」



「まぁ基本的には知り合いだけど。で、その感覚って、PC起動してない時もあると思うんだ、切ってもどっかつながってる。」



「あるかもね〜。」



「でも、巷でネトゲ廃人って呼ばれちゃってるような輩、いるじゃない。…実は、知合いにいて。」



「え?ネトゲ廃人?廃ガラスじゃなくて?」



「うん、オンライン上の方がリアルで、もうこの現実世界にはただ肉体があるだけみたいな。」



「へ〜。」



「そいつ、ほとんど意識はオンライン上にあって、それがログアウトしちゃったら、もうまったく存在しなくなっちゃうんだって。」



「はあ、じゃ、そういう方たち、自分自身をオンライン上のキャラに投影させてるうちに、そっちの世界の住人になっちゃったんだろカ?」



「うん、だからきっとこの現実世界じゃ廃人同様ってこと。極端な話し、理想的には脳だけネットとリンクしてれば良いみたいなわけだからね。そういうこと、機動警察パトレイバーのアニメ監督、押井守だっけ?何かで言ってた。」



「すごいね〜。確かゲームクリエイターもやってるよね?」



「そうそう。しかもお姉さんが舞踏家らしくて、身体について論じ合ったりしてて。逆に身体性に興味あるみたい。まさに電脳身体みたいなイメージなのカ?」



「うーん、それか鏡の中の鏡じゃないけれど、脳内宇宙=ネット空間?ネット身体?ってカ?」



「それってどこに在るんだろカ?不思議だけど、なんだかわかる気も…」



「確かに。ウチら空飛んでるときさ、影、人間達の上に映ったりするじゃない。あれ見てるうちに、その影がリアルなカラダのような気がしてこないでもない…それで堕ちて、飛べなくなったヤツがどれだけいたことカ。」



「………。」



「話はそれましたガ。でもさ、SNSと、ネトゲはちと違うかもね。」



「…そうカ。」



「そう。SNSって、ちょっと別次元でのコミュニティ感覚っていうか、特別な意識は持てるかもね。」



「オンラインゲームみたいなのだと、相手がどこの誰ぞやという感じだからね〜。」



「ちょっと唐突な話し、たとえばさっき言ってた、SNSなんかのつながってる感覚を、注意深く観察して、つながってる感覚、だけを取り出したとするじゃない?」



「ほう。」



「そこでたとえば、災害が起きて、全ての電子機器が使えなくなる。」



「すると?」



「それでも誰々と内側でつながってる感覚だけはリアルに残せる、のカどうなのカ…」



「なるほど、サーバーを経由せず、思いは共有できてます!みたいな?…以心伝心カ⁈」



「うん、時間とか、距離とか関係なくなる。」



「お〜。だからパーフェクト・コミュニティっていうわけカ!」



「そうそう…でもそれってやっぱりアタマだけのコミュニティなのかな〜⁈テレパシーみたいだけど。」



「…どうなんだろね。『ひそかに思いを寄せる』みたいな、初恋みたいなトキメキ、ないんじゃない?」



「なんだ急に⁈」



「『思いを馳せる』とかっていうけれど、時間も空間もカンケーなくなったら、どうなのかな?とか。ほんとうは純粋にそういうチカラをリアルに感じたい。なんてカ(笑)」



「そうか、そういう思いの裏返しがこのネット空間なのカね?…まぁとにかく。何が言いたいかっていうと、文明っていうのは科学技術先行じゃなくて、人間達が思ってるよりも感覚というかカラダ先行だってことカ。」



「ふーん、わかるようなわからないような…」



「そっちは何かないの?考えてること。」



「うーん、斉藤和義かな。」



「え、なになに?」



「いや、話しつながってるけど、最近カラスなりにリアルとフィクションについて考えててさ。」



「しかし、すごいカラスだな…」



「で、最近の世界って、現実の方がフィクションみたいな感じがしてて。」



「あ〜、何かわかる気がする。」



「日々の現実の方が凄すぎて、なんか映画の主人公みたいな感じ。ニュースもほんとカ嘘カわからないし、バラエティもぜんぜん面白く感じないし。」



「そうねぇ。」



「でも、そういうことはあの日の前と変わってなくて、変わったのはこっちなんだよね。で、実はずっと嘘だったんじゃないカ、と。」



「それで斉藤和義カ〜。」



「東電とかマスコミとかはどうでもいいんだけど、つまるところ、この生きてる世界の物質的な現象が全て、嘘だったんじゃないカ、っていう感じ。」



「大きく出たね〜。辺見庸さん的にいえば、『伝えられた風景はすべて偽造』ということカ…」



「みんなフィクション、つまり仮象のなかで生きているわけですな。」



「そうなると、リアルはどこにある?」



「ん〜‥、そうだねぇ。つくらないと無いんじゃないカ?」



「え、どうやってつくるんですカ?」



「うーん、単純なところでは、カラダを内側から観るってことですカね。」



「難しいですね〜。」



「いやいや、難しくないですよ。赤ちゃん子供はみんなやってます。ファンタジーのチカラってすごいよね。ほとんど生命のチカラとおんなじ。」



「そうですカ〜。お、そろそろ仙台に飛ぶ準備しないと。」



「あ〜もう1月終わりカ。年明けから早かったな〜。」



    つづく。